ひっきりなしに患者さんの対応をして、長時間労働を強いられる医師は多いです。実際、勤務医の40%は過労死ラインを超えて働いています。私たち医師は、いつ過労死してもおかしくない状況のまま、働くしかないのでしょうか?
- 残業や時間外労働が多すぎて、毎日苦痛…
- 「医師はいつ過労死してもおかしくない」って噂を聞いた…
- 自分もいつか過労死するんじゃないかと思うと、不安…
死にそうなほどつらいなら、このまま働き続ける必要はありません。私たち医師自身が命を落としてしまったら、本末転倒です。救えるはずの命も救えなくなりますよね。
まずは職場から逃げることを考えましょう。なぜならば、今の職場は慢性的に医師不足を抱えているため、私たち医師が努力しても現状を変えられないからです。
今の職場で働き続けても、正直寿命を縮めるだけです。実際、毎年過労死で約2~3人の医師がなくなっています。そして、医師の40%が過労死ラインを超えて働いているのが現状です。
さらに、長時間労働の元凶である医師不足は、今後も解消されません。国も時間外労働の上限を決めるなど努力していますが、その効果は微々たるものです。
現状を変えるためには、今の職場から逃げて、別の勤務先で働くしか道はありません。具体的には、医師1人に対して、人口当たりの患者数が少ない病院で働くことで、過度な長時間労働から逃れられます。
それでも変わらないのなら、夜勤がない個人病院やクリニックで働くことも選択肢に入れましょう。社会信用度が下がりますが、非常勤も過労死から逃れる解決策の1つです。
患者さんのために、限界を超えて働き続けてきた気持ちはわかります。しかし、私たち医師が倒れたら、最終的に困るのは患者さんです。医師の使命を果たすためにも、まずはご自身の健康を第一に考えましょう。
ここでは、過労死する医師の数や、過労死が減らない理由について紹介します。それから、私たち医師が過労死を防ぐ方法も紹介します。
- 過労死ラインで働いて、悲鳴を上げている医師の声は?
- 過労死する医師の数は、過労死が減らない理由は?
- 過労死を防ぎ現状から抜け出す、解決策は?
記事の内容を簡単に知りたい
働きすぎて過労死しそう、もう疲れた…
毎日長時間労働をしてると、本当に疲れますよね。疲れ果てた結果、過労死や自殺するほど追い込まれてしまう医師も少なくありません。
Aさん)84日間連続で働いて、過労死…
男性医師は14年4月から長崎市の「長崎みなとメディカルセンター」に心臓血管内科医として勤務。同年12月中旬、自宅で心肺停止の状態で見つかり、死亡が確認された。
判決は死亡の2~6カ月前の時間外労働時間の平均が月177・3時間にのぼり、死亡の約2カ月前まで84日間の連続勤務があったと認定。男性医師は主治医として1カ月あたり平均30・5人の入院患者を担当しており、「相当程度の精神的緊張を伴う業務を日常的に担当していた」と指摘した。
病院側は「医師の外来診療を減らすなどの労務措置をとってきた」と主張していたが、判決は「病院は、医師が自ら申請する時間外労働のみを把握するにとどまった」などとして退けた。
医師不足により、少ない医師に業務が集中することが多々あります。でも、休日も勤務先に出向いて、連続勤務させられるのは辛いですよね。
この病院も、おそらく赤字経営で新しい医師を雇う余裕がなかったのかもしれません。ただ、その結果、私たち医師が苦しむのに納得はいきませんよね。
何十日も連続勤務していれば、必ず健康に異常をきたします。勤務先には申し訳ないですが、別の病院で働いた方がいいです。
Bさん)月250時間も残業させられて、過労自殺…
新潟市民病院女性研修医 木元文(あや)さん=当時(37)残業最長月250時間、 過労自殺
• 昨年1月に市内の公園で公園の雪の上で自死
• 女性は毎月、過労死ラインとされる月80時間を上回る月100時間以上の残業を繰り返し、最長だった一昨年8月は251時間だった。
• 「気力がない」「病院に行きたくないし、人とも会いたくない」ともらし始めた。
• 医者になんか、なるんじゃなかった
研修医や若い勤務医は、法外な時間外労働をしています。患者さんを救うためとはいえ、過労死ラインを超えて働いていれば、気力がなくなるのも当然です。
Cさん)労働時間が過労死ラインを超えてる、国は何をしてるの…
医師の過労についてです。
今年厚労省により新たに定められた勤務医の年間の時間外労働の上限は基本が960時間で、特別な場合1860時間らしいです。
対して一般の職種では基本が360時間で特別な場合、720時間だそうです。
そして960時間が過労死ラインだそうです。この国は医師に死ねと言っているのですか?調べてみて驚きました。過労死ラインを超えたら一般にブラック企業というそうです。医師は下手するとブラックの基準の二倍働くってことですよね?
どうして医師の過労が国によって明確に容認されているのにマスコミは問題にしないんですか?一般国民には関係なくて大衆受けが悪いからですか?
それとも医師は優秀だから過労でも平気なのでしょうか?医学部受験や大学でもありえない量勉強すると聞くし普通の人とはスペックが違うんですか?
もしかして我々の医療は医師ほか医療従事者の善意と自己犠牲で成立しているのですか?
参考:Yahoo知恵袋
医師の過労死近い労働に関しては、国も手を焼いています。上限を設けるらしいですが、その上限が過労死ラインを超えているので、期待はできないですね。
ただ、国が厳しい規制をしけば解決するとも言い切れません。仮に、過労死ラインを下回る規制を設けたとしても、病院が回らなくなるのは明らかですよね。
国や病院が手を焼いている現状、今の職場に居続けても労働時間は減りません。なので、状況を変えるには別の職場に移るしかありません。逆にそういった逃げ道を用意しないと、精神的に追い込まれ続けます。
辞める病院や残った医師には申し訳ないです。しかし、そこまで自身を犠牲にする必要はないです。他人の気持ちを思いやって、自分が死んでしまっては意味がないですよね。
以上のように、過労死してもおかしくない状況で働いている医師は多いです。では具体的に、どのくらいの医師が苦しい状況に立たされているのでしょうか?
過労死する医師はどのくらい?過労死が減らない理由は?
私たち医師の半数近くが、いつ過労死してもおかしくない状況に立たされています。
その1:過労死の件数は、5年間で11件ある
厚生労働省がまとめた過労死白書によりますと、2010年から2015年までの5年間に労災と認定された医療関係者は285人でした。このうち過労死は47人で、医師が4分の1近くの11人を占めました。このうち8人が診療などの長時間労働による脳や心臓疾患での過労死でした。
毎年、数人の医師が過労死により亡くなっています。
厚生労働省によると、2010年から2015年までの5年間に、過労死と認められた医師の数は11人でした。つまり、毎年2~3人の医師が過労死により亡くなっています。
過労死した人の数だけで言えば、運送業やサービス業よりも少ないです。しかし、亡くなった人の数が少なくても、医師の仕事が大変なのは変わりないですよね。
その2:勤務医の40.5%が「過労死ライン」を超えて働く
医師の半数近くが、「過労死予備軍」の状態にあります。
勤務医の40.5%が、月80時間以上の時間外労働をしています。つまり、医師の約2人に1人は、過労死ラインを超えて働いています。
さらに、月200時間以上の時間外労働をしている医師は4.5%います。月200時間の時間外労働は、過労死や過労自殺してしまった医師と同じ労働環境です。
このように、医師は過労死している人の数自体は少ないものの、全職業の中で「過労死予備軍」の数が2番目に多い職業です。
全職業でみた過労死予備軍の出現率は0.9%だが、医師では11.1%にもなる。9人に1人が、いつ過労死してもおかしくない状態で働いている。勤務医の過労はよく指摘されるが、それが数値にも表れている。
その3:過労死が「減らない」理由は?
人口 1,000人当たり医師数は日本では 2.4人、OECD平均は 3.5人である。
参考:医療関連データの国際比較
過労死や長時間労働が減らない原因は、日本の慢性的な医師不足にあります。
世界と比べると、人口1,000人当たりの医師数は、日本で2.4人です。一方、OECD(欧州や北米を中心とした、36の国々)の平均は3.5人なので、日本の医師数は世界と比べて低い水準にあることがわかります。
医師の数が少ないため、医師1人当たりの業務負担が増えます。さらに、病院は赤字経営のところが半数を占めるため、新たに医師を雇うこともできません。
上記の状況が、データを見る限り2000年からずっと続いています。これが、私たち医師が過労死スレスレの労働時間に苦しむ理由です。
国は時間外労働の規制を設けるなど対策を施していますが、医師不足という根本的な問題を解決するには至っていません。また、病院も赤字経営であれば、手の施しようがありません。
よって、長時間労働を減らすには、私たち医師自身が行動しなければなりません。では、「過労死予備軍」から抜け出すために、私たちは具体的にどうすればいいでしょうか?
「過労死予備軍」から抜け出す方法は?
過酷な労働環境から抜け出すには、今の職場から逃げることを第一に考えましょう。
なぜならば、今あなたが働いている職場は慢性的な医師不足を抱えているため、私たち医師がいくら訴えかけても労働時間は減りません。別の職場で働くという逃げ道を用意しておけば、心の負担も軽くなります。
方法1:患者10万人当たりの医師数が多い病院で働く
都道府県(従業地)別にみると、徳島県が329.5 人と最も多く、次いで京都府323.3 人、高知県316.9 人となっており、埼玉県が169.8 人と最も少なく、次いで、茨城県187.5 人、千葉県194.1人となっている。
参考:厚生労働省
医師数が多い地域の病院で働けば、過労死すれすれの労働をしなくて済みます。なぜなら、医師1人当たりの業務負担が少なくなり、時間外労働や残業も減るからです。
人口10万人当たりの医師数が最も多い県は、徳島県です。次いで、京都府、高知県となっています。これらの県で働けば、過労死近い労働は避けられます。
一方、人口10万人当たりの医師数が最も少ないのは埼玉県で、次いで、茨城県、千葉県となっています。これらの県では過労死ラインを超えるのは避けられません。
もちろん、医師数が多い県の病院が必ずしも安全とは言い切れません。でも、今の職場に居ても状況が変わらないなら、絶対と言い切れなくても職場を移るべきじゃないですかね。
確実に現状を変えたい方には、他の解決策もあります。
方法2:夜勤がない個人病院やクリニックで働く
- 救急や緊急対応など、きつい時間外労働をしなくて済む
- 重病患者の対応が少ないため、精神的に楽
- 「医師のやりがい」は減るかも
過労死スレスレの労働を避けたかったら、救急や夜勤がない病院で働くのも手です。なぜなら、こういった病院は、そもそも時間外労働がほとんどないですよね。
時間外労働が発生する理由のトップ2は、「診断書やカルテ等の書類作成」と「救急や入院患者の緊急対応」です。救急や夜勤がない病院であれば、緊急対応がない分、時間外労働が少なくなりますよね。
また、個人病院やクリニックに来るのは軽症の患者さんです。重症の患者さんはきの大きい病院に搬送されますよね。よって、患者さんの対応が精神的に楽になります。
その分、患者さんの命を救うやりがいは減るかもしれません。でも、過労死しそうなほどつらいなら、今の職場から逃げ出すほうがいいです。
自分の命を犠牲するよりは、個人病院やクリニックで確実に患者さんの健康に貢献する方がいいですよね。
方法3:非常勤で働く
- 週3以下のペースで働けるため、過労死のリスクが確実に減る
- 定時で帰宅など、労働条件がいい職場が見つかりやすい
- 年金や保険、納税の管理を自分でするのが若干面倒
非常勤になれば、働くペースが週3以下になり、確実に過労死のリスクから逃れることができます。
なぜなら、厚生労働省により、非常勤医師の労働時間は週に32時間未満と決まっているからです。
病院で定めた医師の1週間の勤務時間が、32時間未満の場合は、32時間以上勤務している医師を常勤医師とし、その他は非常勤医師として常勤換算する。
参考:厚生労働省
週の労働時間が決まっているため、労働条件のいい職場も見つけやすいです。定時で帰宅できたり、今以上に休日が増やすこともできます。今の職場と比べて断然いいですよね。
ただし、病院が管理する社会保障は受けられなくなります。よって、自身で年金や保険に加入する必要があります。また、確定申告も自分でする必要があります。
でも、過労死スレスレの状況から抜け出せるので、これらの手間はあまり気にならないです。
非常勤医師になれば、圧倒的に休日が増えるので、心も体も楽になります。即効性があるので、辛い現状から今すぐ開放されたいのなら、非常勤として働くのがおすすめです。
まとめ|「過労死予備群」の医師は働き続けるしかない?
- 今の職場から逃げ出すべき、働き続けても意味はない
- 実際、毎年2〜3人の医師が過労死で亡くなっている
- 過労死ラインを超えて働く医師は、全体の40%
- 慢性的な医師不足で、今後も過労死する医師は減らない
- 現状を変えるためには、別の職場で働くしかない
過労死で死にそうなほど辛いなら、まずは職場から逃げることを考えましょう。なぜならば、今の職場は慢性的に医師不足を抱えているため、私たち医師が努力しても現状を変えられないからです。
今の職場で働き続けても、正直寿命を縮めるだけです。実際、毎年過労死で約2~3人の医師がなくなっています。そして、医師の40%が過労死ラインを超えて働いているのが現状です。
さらに、長時間労働の元凶である医師不足は、今後も解消されません。国も時間外労働の上限を決めるなど努力していますが、その効果は微々たるものです。
現状を変えるためには、今の職場から逃げて、別の勤務先で働くしか道はありません。具体的には、医師1人に対して、人口当たりの患者数が少ない病院で働くことで、過度な長時間労働から逃れられます。
それでも変わらないのなら、夜勤がない個人病院やクリニックで働くことも選択肢に入れましょう。社会信用度が下がりますが、非常勤も過労死から逃れる解決策の1つです。
患者さんのために、限界を超えて働き続けてきた気持ちはわかります。しかし、私たち医師が倒れたら、最終的に困るのは患者さんです。医師の使命を果たすためにも、まずはご自身の健康を第一に考えましょう。
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