医師の時間外労働上限が長すぎる|規制されない理由は?

毎日当然のようにある時間外労働に、不満や疑問を抱く医師は少なくありません。

  • 時間外労働が多くて、職場を変えたい
  • 時間外労働が多いのは当たり前だと思ってたけど他の業界はどうなんだろう
  • このまま我慢して、働き続けた方がいいのかな

時間外労働が辛いなら、無理して働く必要はありません。なぜなら、働くかどうかは私たち医師自身が決めることだからです。

ここで、国は頼りになりません。なぜなら、国が検討している新たな規制は、法外な時間外労働を容認しているからです。具体的に見ると、厚生労働省が2024年から施行する、時間外労働規制の上限は年1860時間です。これは、過労死ラインである年960時間の約2倍です。

そして、国が明確な対策を出せていないため、現在も医師のほとんどが法外な時間外労働をしています。

厚生労働省によると、勤務医の実に40%が、いつ過労死してもおかしくない月80時間以上の時間外労働をしています。患者の命を救う医師自身が、死の危険に立たされているなんて本末転倒です。

おまけに、国は「医療が回らなくなる」という理由を盾に、医師が時間外労働規制を破るのを黙認しています

したがって、私たち医師だけでは、時間外労働が異常に多い現状を変えることができません。よって、まず最初にやるべきなのは、過酷な時間外労働を上司に訴えかけることです。

もし、上司や勤務先に相談しても解決しないなら、私たち自身が働き方を変えるしかありません。いずれにしろ、選択権は医師自身にあることを忘れてはいけません。医師にも、健康で豊かな生活を送る権利があるのです。

ここでは、時間外労働の上限や、時間外労働に対して規制が行われない理由、長時間労働を避ける方法を紹介します。

時間外労働に苦しむ医師向け
  1. 時間外労働が辛く、病院を辞めたいと感じている医師の声は?
  2. 時間外労働の上限は、規制が守られない理由は?
  3. 時間外や長時間労働を避ける、対策方法は?

時間外労働が辛くて病院を辞めたい…

時間外労働に苦しむ医師

 

Aさん)時間外労働の上限が1860時間もある…

医師の過労についてです。

今年厚労省により新たに定められた勤務医の年間の時間外労働の上限は基本が960時間で、特別な場合1860時間らしいです。
対して一般の職種では基本が360時間で特別な場合、720時間だそうです。
そして960時間が過労死ラインだそうです。

この国は医師に死ねと言っているのですか?調べてみて驚きました。過労死ラインを超えたら一般にブラック企業というそうです。医師は下手するとブラックの基準の二倍働くってことですよね?

どうして医師の過労が国によって明確に容認されているのにマスコミは問題にしないんですか?一般国民には関係なくて大衆受けが悪いからですか?

それとも医師は優秀だから過労でも平気なのでしょうか?医学部受験や大学でもありえない量勉強すると聞くし普通の人とはスペックが違うんですか?

もしかして我々の医療は医師ほか医療従事者の善意と自己犠牲で成立しているのですか?

参考:Yahoo知恵袋

医師の時間外労働は長すぎますよね。上限が1860時間まで認められているのも、納得がいきません。

Aさんの言う通り、日本の医療は医師や医療従事者の自己犠牲のもと成り立っています。たびたび、「日本の医療は世界一」、「誰でも世界最高峰の医療が受けられる」と言われます。しかしこの裏には、一睡もできず、夜中から翌日の昼間まで労働し、疲弊しきっている医師がいることを知ってほしいですね。

Bさん)どうして医師には規制がないのだろうか…

医師と長時間労働。

病院勤務の医師は、非常な長時間勤務と言われます。普通給料が高額なら長時間働く必要が無いと思います。
仕事内容も、人体を扱う重要で危険な仕事です。睡眠不足、過労状態では危険です。医師は、労働者ではないのですか。
規制は、ないのでしょうか

常識と正反対で疑問です。
理由を教えて下さい。

参考:Yahoo知恵袋

医師の時間外労働に規制はなく、強制というより当たり前のように長時間労働が行われています。特に、当直明けの通常勤務をしているときは、いつ倒れてもおかしくないという日もあります

さらに、過労状態で患者さん対応をしなければいけないので、「医療事故を起こすんじゃないか」という不安もあります。

Cさん)時間外労働で月に300時間もしてる…

続けられないのはダメ人間?

医師ですが、転職したいと考えています。理由は仕事が辛すぎるからです。時間外労働は月に300時間前後しかしていません。たったこれだけの労働で心身とも限界です。
以前は年間休日が土日祝日、年末年始含めて10日くらい(時間外労働は月に420時間くらい)でしたので、大分マシになっているハズなのに。
この程度で根をあげているようでは、転職しても続かないでしょうか?

参考:Yahoo知恵袋

医師をしていると、長時間労働が当たり前すぎて、時間外労働があるのが普通だと思ってしまいます。しかし、Cさんが経験した「月300時間の時間外労働」は異常で、いつ死んでもおかしくないです。

さらに、医師は責任感が強いので、心身の限界を自分のせいにしてしまいます。でも、そこまでして働いていても、過労死や医療事故など最悪の結果に陥るだけです

まずは、自身の健康を第一に考えましょう。先月の時間外労働時間を振り返ってみて、80時間を超えていたら危険信号です

 

時間外労働の上限は?規制が守られない理由は?

時間外労働が規制されない理由は?

 

その1:時間外の上限は1860時間もある?

2024年の4月から時間外労働の上限が設けられます。しかし、この規制は、私たち医師が直面する時間外労働の問題を解決できていません。なぜなら、検討している内容を見ればわかりますが、規制後も法外な時間外労働ができてしまうからです。

厚生労働省によると、国は2024年4月以降、医師の時間外労働の上限を、最大で年1860時間に規制することを検討しています。しかし、一般的に過労死を引き起こす危険性がある時間外労働(過労死ライン)は、年960時間が目安です。

つまり、医療機関は2024年以降も、過労死ラインを超えて医師に時間外労働をさせられます

さらに、規制に背いても、現状医療機関に対して何も罰則が検討されていないのも問題です(2020年3月時点)。なぜなら、罰則がないと、医師を酷使しても医療機関には何も害がないですよね。

このままだと、医療機関は医師に制限なく時間外労働を強いることができますよね。そうなると、利益のことばかり考える病院経営者は、今までと変わらず、私たち医師が時間外労働に苦しんでいても見て見ぬふりをします。

はっきり言って、国もお手上げ状態です。今後も、国は規制について検討し続けると思いますが、期待しない方がいいですね。では、規制がなく野放しになっている現在、勤務医の時間外労働を取り巻く実態はどうなっているのでしょうか?

参考:厚生労働省「時間外労働規制のあり方について⑥」

その2:勤務医の時間外労働の実態は?

現在、医師には時間外労働の規制は設けられていません。そして、勤務医の2人に1人は、いつ過労で倒れてもおかしくない状況にあります。

厚生労働省によると、勤務医の実に40%が月80時間以上の時間外労働をしているからです。日に換算すると、毎日10時間以上は残業をしていることになります。

時間外労働の時間に通常業務(8時間)をたすと、16時間になります。つまり、私たち医師のほとんどは、毎日8時間しか自由な時間がないということになります。

こんな状況であれば、自由な時間はもちろん、睡眠時間ですら満足にとれません。十分な休息が取れず不健康な状態では、まともに業務に集中できませんよね

そんな中、他の労働者はすでに時間外労働の規制が設けられていますが、医師は2024年まで規制が見送られています。なぜ、医師だけが時間外労働の規制が守られず、野放し状態が続いているのでしょうか?

その3:医師だと規制が守られない理由は?

国や病院上層部は、医師に時間外労働の規制を遵守すると、医師の数が少ない病院が回らなくなると考えています。

なぜなら、日本は医師1人の仕事負担が大きく、業務をすべてこなすために、時間外労働せざるを得ない状況が続いているのです。

OECDによると、人口1000人当たりの医師数は、日本で2.4人となっています。これは、OECDに加盟している先進国35か国中、30位の医師数です。つまり、日本は世界と比べて、人口当たりの医師の数が不足しているということです。

さらに、日本では「病院の場合最低3名以上の医師が必要」と決まっています。裏を返せば、医師が3人いれば病院を経営できるということです。たった3人で日勤、夜勤をカバーする中、規制をしたら確かに医療が回りませんよね。

そして、医師1人当たりの負担が増えることで、病院を辞める可能性も高まります。勤務先の医師が辞めることで、他の医師の仕事負担はますます大きくなります。

結果、時間外労働はさらに増えて、規制なんて守れなくて当然という状況に陥ってしまいます。まさに悪循環ですね。

このように、国は規制を守っていなくても野放し状態で、今後も改善に期待はできません。よって、時間外労働を避けるには、私たち医師自身が行動する必要があります。では、具体的にどうすればいいのでしょうか?

時間外や長時間労働を避ける対策方法は?

時間外労働を避けるには?

 

対策1:勤務時間について上司に相談する

勤務先の現状を変えるには、上司や経営者に相談するしかありません。なぜなら、私たち医師がいくら努力しても意味がないからです。勤務先の医師が増えない限り、時間外労働は減りません

そこで、私たちができるのは、まず過酷な時間外労働を上司に訴えかけることです。上司や病院と協力できれば、問題を早期解決できますね。

厚生労働省によると、「労働時間管理の適正化に向けた取組」を前向きに考えている医療機関は、全体の約60%を占めます。問題を深刻に受け止めてくれる病院は、思ってるより多いですよ

ただし、利益重視で医師を金儲けの道具としか考えない経営者がいるのも事実です。もし相談しても意見を突っぱねられたら、危ない職場と考えていいですね

また、時間外労働を黙認する病院は、そもそも赤字経営な場合が多いです。働き続けても搾取されるだけです。いっそのこと、転職して病院を移った方がマシですね。

対策2:1人当たりの医師数が多い病院で働く

1人当たりの医師数が多い病院であれば、時間外労働は減ります。なぜなら、医師1人の負担が減るからです。負担が減った分、時間外労働をしないで済みます

厚生労働省によると、人口10万人当たりの医師数が最も多い県は、徳島県で329.5人です次いで、京都府323.3人、高知県316.9人となっていますこれらの県の病院であれば、法外な時間外労働を避けられます

人口10万人当たりの医師数の全国平均は246.7人です。よって、医師数が最も少ない埼玉県169.8人や、茨城県187.5人、千葉県194.1人で働けば、過労死ラインを超えるのは避けられません

職場を変えるのは簡単に決断できません。しかし、医師を続けるなら、時間外労働が横行する環境で働き続けるのは、得策ではないです。自身の健康に悪いですし、医療事故を起こす可能性もあります。

倒れたり、医療事故を起こしてしまった後では手遅れです。体が持たなくなる前に、今の働き方を考え直しましょう。

参考:厚生労働省「平成30年(2018年)医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」

対策3:救急や夜勤がない病院で働く

時間外労働を避けたかったら、救急や夜勤がない病院で働くのが一番です。なぜなら、こういった病院は、そもそも時間外労働がほとんどないですよね。

二次救急以上の救急体制が整備されていない病院の数は、約5,000か所あり、全病院の約60%を占めます。また、歯科診療所以外の診療所や個人クリニックは、全国に約33,000か所あります。

このように、時間外労働が少ないと思われる病院や診療所は、思ったよりたくさんあります。こういった病院で働けば、時間外労働から逃れることができます

長時間労働が死ぬほどつらいなら、今の職場に居続ける意味はないですよね。別に、病院には医師を強制的に働かせる力はありません。私たち医師の責任感の強さを逆手に取り、洗脳しているだけです。

患者さんを救う使命は、別の勤務先でも達成できます。まずは、自分の健康を第一に考えてください。医師が倒れてしまっては、救える命も救えません。

まとめ:時間外労働の現状と今後、規制されない理由は?

 

時間外労働の現状と今後は…
  1. 2024年から施行される、時間外労働の上限は年1860時間
  2. 過労死ラインは年960時間、医師の上限と比べて約2倍も違う
  3. 勤務医の40%が、いつ過労死してもおかしくない状況
  4. 「医療が回らなくなる」を理由に、時間外規制を破っても国は黙認
  5. 無理して働く必要はない、まずは上司や勤務先に相談
  6. 自分の健康を第一に考えて、働き方を変える

時間外労働が辛いなら、無理して働く必要はありません。なぜなら、働くかどうかは私たち医師自身が決めることだからです。

過酷な時間外労働を解決する際、国は頼りになりません。なぜなら、国は2024年から施行される規制で、上限として年1860時間の時間外労働を認めています。これは、過労死ラインである年960時間約2倍です。つまり、法外な時間外労働を容認しています

そして、国が明確な対策を出せていないため、現在も医師のほとんどが時間外労働をしています。

厚生労働省によると、勤務医の実に40%が、いつ過労死してもおかしくない月80時間以上の時間外労働をしています患者の命を救う医師自身が、死の危険に立たされているなんて本末転倒です。

おまけに、国は「医療が回らなくなる」という理由を盾に、医師が時間外労働規制を破るのを黙認しています

したがって、私たち医師だけでは、時間外労働が異常に多い現状を変えることができません。よって、まず最初にやるべきなのは、医師不足による過酷な時間外労働を上司に訴えかけることです。

もし、上司や勤務先に相談しても解決しないなら、私たち自身が働き方を変えるしかありません。患者さんを救う使命は、別の勤務先でも達成できます。まずは、自分の健康を第一に考えてください。医師が倒れてしまっては、救える命も救えません。

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