医師がうつ病になる原因は?|仕事を続けられる?

仕事にまじめに取り組みすぎて、うつ病の症状が出る医師は多いです。実際、医師の10人に1人はうつ病や、兆候である抑うつ状態にあります。なぜ、私たち医師はうつ病になってしまうのでしょうか?

  • 仕事が忙しすぎて、やる気がわかない
  • 患者さんを救うはずが、うつ病になってしまった…
  • 迷惑をかけるくらいなら、死んでしまいたい

うつ病になる一番の原因は過酷な労働です。

医師は、全職業の中で、最も労働時間が長いです。そして、極度の疲労状態に陥った結果、私たち医師は自殺を考えたり、気分が落ち込んだ状態になってしまいます。

さらに、人間関係もうつ病の原因になります。実際、医師の約7割が上司に不満を訴えています。無理やり仕事を押し付けられたり、理不尽な叱責を受けることで、いっそう精神的負担がかかります。

うつ病に悩み、死ぬほどつらい状態でいるなら、今すぐ仕事を休みましょう。なぜなら、うつ病のまま仕事を続けても、病状が悪化するだけだからです。精神的に追い込まれ続けて、最悪の場合自殺してしまう危険性もあります。

まずは症状を改善するために、一度まとまった休日をもらいましょう。その上で、心のケアをしていきましょう。

ここでは、医師がうつ病に悩む原因を紹介します。さらに、うつ病に悩む医師に向けて、症状を改善する3つの方法を紹介します。正しく改善すれば、医師の仕事を続けられることがわかります。

うつ病に悩む医師向け
  1. うつ病で仕事の意欲がわかない、医師の声は…
  2. 医師がうつ病になってしまう原因は?今すぐ仕事を休むべき
  3. うつ病の症状を改善する、3つの方法は?

見出し1:仕事の意欲がわかない、うつ病かな…

Aさん)徐々に仕事の意欲が減っていき、うつ病と診断された…

出身の防衛医科大学校病院は、2004年の初期臨床研修が始まる前から、総合的な臨床医を育てるためのローテーション研修を行っていました。
もともと子どもから高齢者、男女関係なく診療できる医師を目指していたので張り切っていましたが、採血からカルテ書きまで、何でも完璧にしなければならないと思い込み同期の中でも要領の悪さが目立っていました。2年目から専門を循環器科としましたが、朝から晩まで病院にいて、ポケットベルを24時間携帯する日々。当時、すべてのコールは研修医が受けていたので気が休まる日はありませんでした。その後、調子を崩して1ヶ月お休みをもらいましたが復職しても意欲が戻らず、精神科を受診したところ、うつ病と診断されました。

参考:医師のためのキャリアデザインラボ

医師は責任感が強いため、仕事を完璧にしなければならないと思い込んでしまいますよね。

でも、完璧にしようと思っても、上手くいかないことは当然あります。そして、すべて完璧にしようと思っていたら、些細なことでもミスをしたと思い、自分を責めてしまいます。

全てを完璧にするのではなくて、まずは命に関わるなどミスが許されない仕事のみに集中するべきです。気を張り続ければ精神的に追い詰められて、それこそうつ病になってしまいますよね。

Bさん)精神科医だけど、うつ病になってしまった…

泉先生は、医学生のとき、無二の親友をうつ病で亡くされ、精神科医になることを決心しましたが、患者さんに必死に寄り添う医療を実践される中、精神科医3年目にして自分自身もうつ病になってしまいました親友を死なせたうつ病に復讐しようとして自分もうつ病になってしまったことはさぞかし大きな挫折だったろうと思います。同僚たちから働き過ぎを警告されても、親友のような死に方を担当患者さんに繰り返して欲しくないとの一心からオーバーワークが止められなかったのです
先生は不調を感じ、秘かに抗うつ薬を処方してもらいながら大学病院の激務を続けましたが、やがて笑ったり話したりする気力もなくなり、景色がモノトーンに見え出しました。仕事の効率は極端に悪化して、死ぬこと以外考えられなくなってしまいます。責任感が人一倍強く、生真面目で一途な泉先生は、仕事を辞めてまわりに迷惑をかけるくらいなら死んでしまいたいと考えたのです。 

参考:山梨県立北病院

精神科医でさえもうつ病になることはよくあります。むしろ医師は、過酷な労働環境におかれるのでうつ病になりやすい職業です。

また、抗うつ薬を処方してもらっても、Bさんのように労働環境が変わらなければ治りません。自殺を考える状態になる前に、まとまった休日をもらうべきです。

Cさん)うつ病になったけど、入院だけはしたくない…

30代の夫のことなのですが、外科医で真面目、几帳面な性格で、多忙、連日の当直などが原因で三年前にうつ病になりました。勤め先の病院で治療していたのですが発症して約1ヶ月後に約1ヶ月入院しました。勤め先だとまずいということで違う病院に入院しました。その後1ヶ月自宅療養しもう大丈夫ということで退院しましたが、元の病院に戻りたくないということで、その前に勤務していた地方の総合病院に現在まで勤務しております。

(…中略…)1ヶ月ほど前に、夫の部屋でリタリンの瓶を見つけました。中身は空です。

(…中略…)先週の金曜の診察日に主治医にリタリンはすぐにやめること、と言われ本人は最初飲んでません、としらを切っていたのですが最後には、わかりました、やめます、と申し ておりました。それから1週間経ちますが禁断症状といいますか、1度も仕事に行けず、家でずっとゴロゴロしております

(…中略…)本人は入院は絶対したくないと申しておりますがやはり入院した方がよいのでしょうか。(以下略)

参考:Dr林のこころと脳の相談室

医師は職業柄、薬を調達しやすく、うつ病の症状がでたら安易に処方してもらおうとする医師が多いです。

しかし、この考えは危険です。最悪の場合、Cさんのように過剰に薬を処方した結果、薬物依存に陥ってしまう可能性もあります。

医師が薬物依存になってしまうと、容易に入手出来てしまうことから非常に回復しにくいです。まず依存症を直してからうつ病の治療に取り組む必要があるので、完治するまで時間がかかります。このケースでは、症状が悪化しすぎているので入院するしかないです。

このように、患者さんを直す立場である医師がうつ病にかかり、入院をするまで悪化するケースも多いです。

では、なぜ医師はうつ病になってしまいやすいのでしょうか?

見出し2:医師がうつ病になる原因は?今すぐ仕事を休むべき?

その1 :労働時間が、全職業の中で最も長い

医師の働き方改革を議論する厚生労働省の検討会が今年3月にまとめた報告書(※1)には、医師は、全職種中、最も労働時間が長い」と強調されています。そして、日本の医師がおかれた現実として

3.6%が自殺や死を毎週または毎日考える

6.5%が抑うつ中等度以上

半数近くが睡眠時間が足りていない

76.9%がヒヤリ・ハットを体験している

という事例が紹介されています。

参考:朝日新聞

医師の労働時間は異常に長く、その影響で約10%の医師が抑うつ状態や自殺を考える状態に陥っています

また、労働時間が多い一方で、半数以上の医師が睡眠時間が足りないと訴えています。そして、76.9%はヒヤリハットを体験しています。長時間労働は体を酷使するだけでなく、心も蝕んでいきます。

労働時間が長いままでは、心身ともに疲弊していき、いずれはうつ病を患ってしまいます

しかも、医師がうつ病になる原因は、長時間労働だけではありません。職場の人間関係も、私たち医師を精神的に追い込む原因となっています。

その2:医師の約7割が、上司に不満を訴えている

“愛され上司”、“憎まれ上司”の存在は、上司・部下の問題だけではありません。医師の71.1%が、直属の上司との相性が勤続に影響すると答えています。もはや医師の離職・定着にも影響する、病院全体の問題と言えそうです。

参考:m3.com

医師の約70%が、上司との相性が仕事に影響していると答えています。

上級医や指導医からきつく責められると、気分が落ち込みますよね。医師は責任感が強いため、ミスをした分働きすぎてしまいます。その結果、心身の疲労が限界を超えて、うつ病になってしまうことは容易に想像できます。

このように、医師がうつ病を発症する原因は、周りの環境が影響していると言えます。長時間労働や、上司との関係を放っておいたら、いつまでもうつ病の症状に悩まされ続けます。

一度休日をとって症状を改善させなければ、仕事を続けるのは難しいです。

その3:うつ病になったら、今すぐ仕事を休むべき

うつ病のまま仕事を続けると…
  1. 仕事を続けても、うつ病は治らないまま
  2. 抗うつ薬を処方しながら働いても、症状が改善しない
  3. 死んだ方がマシと思い、自殺する危険性あり

うつ病の状態のまま仕事を続けても悪化するだけです。

私たち医師は薬を簡単に調達できるので、抗うつ薬を処方しながら仕事を続けられると思うかもしれません。しかし、よく考えれば不可能なことがわかります。なぜなら、いくら薬で症状が改善しても、原因が周りの環境にあるなら再び症状を患ってしまいますよね。

うつ病の症状が進行していき、自殺という最悪のケースに陥る可能性もあります。最悪の状態に陥る前に、まずは一定期間休みをもらってください。

休みをもらったうえで、心のケアをして症状を改善していくべきです。では具体的に、どういった改善方法があるのでしょうか?

見出し3:うつ病の症状を改善する方法は?

その1 :カウンセラーや病院を受診する

カウンセラーや病院を受診すると…
  1. 勤務先の医師よりは、相談がしやすい
  2. 薬を使った治療は、眠気などの副作用を伴う
  3. 薬を使わない治療法に詳しい医師は少ない

うつ病の治療をするため真っ先に浮かぶのは、病院やカウンセラーの通院です。

医師の2人に1人は、他の医師へ健康相談をしていません。(参考:リクルートドクターズキャリア)相談しにくい環境にいる医師でも、通院を機に人に相談できるようになるため、精神的に楽になります。

ただ、通院して薬を服用するようになると副作用を伴うことがあります。具体的には、飲み始めのころに不安や焦り、服用半ばには食欲低下や眠気、頭痛などに襲われる可能性があります。(参考:元住吉こころみクリニック

仕事を続けながら通院というよりは、長期間仕事を休んでの治療になります。また、薬なしの治療法もありますが、そういった治療法にたけた病院は少ないです。

さらに、医師という職業柄、クリニックや病院といった医療機関に行くのに抵抗がある方も多いと思います。そういった方は、セルフケアを実践してみましょう。

その2:セルフケアで症状を改善する

セルフケアをすると…
  1. 薬を使用しないため、副作用を気にせず気軽にできる
  2. 薬と違い、上手くいけばうつ病の症状を根本的に解決できる
  3. 強制力がないため、続かない可能性が高い

自分でできる治療法として、認知行動療法という方法があります。認知行動療法とは、ものの受け取り方や考え方を改めて、ストレスに対応できるこころを作っていく治療法です。

私たち医師は、以下のような考えをきっかけに、うつ病に陥ってしまいます。

○優れた医師は,最新の医学を常に勉強し続けれなければならない.(すべき思考)
○大学を離れると英文で発表できるような質の高い学術研究はできなくなる.(論理の飛躍)
○教授選に負けたら,一生立ち直れない敗北者になってしまう.(全か無か思考,レッテル貼り)
○専門医資格を取得しないと、この業界では生きていけない(すべき思考)
○医師たるもの患者さんには常に共感できなくてはならない.(すべき思考)
○中心静脈穿刺がうまくできなかった.他の研修医はみんなすんなり入るのに,こんな基本的な手技さえ満足にできない自分は医者には向いていないんだ.(一般化のしすぎ,心のフィルター,マイナス化思考,拡大解釈と過小評価)

参考:医者を辞めずに済む方法

認知行動療法ではこのような過剰な思い込みをなくしていきます。具体的に一人でやる際は、認知行動療法に関するサイトや書籍を読んで、治療法を実践しましょう。

自分のペースで、薬の副作用も気にせず実践できます。また、うつ病を抑え込むのではなく、うつ病にいたる考え方を直す治療法なので、根本的にうつ病を直すことができます。

ただ、セルフケアなので強制力がなく、続かない可能性があります。また、うつ病で心が弱り切ってるなら、分厚い本の内容を理解するのは難しいです。認知行動療法を行う病院を見つけるのが一番いいですが、そもそも通院に抵抗のある医師も多いですよね。

そういった場合は、いっそのこと転職をして周りの環境を変えても、症状が改善できます。

その3:転職して環境を変える

転職すると…
  1. 長時間労働や人間関係が原因なら、症状を改善できる可能性大
  2. うつ病の症状に理解のある職場を選べる
  3. 性格など症状の原因が根本的なものだと、改善の望みは薄い

そもそも、医師がうつ病になるきっかけは、長時間労働や人間関係などの周りの環境が原因です。もし、周りの環境が変わって、労働時間が少なくなり上司との関係も良好になったら、精神的に追い込まれることはなくなりますよね。

また、転職する際には、うつ病の症状を考慮して働ける勤務先も探せます。仕事をしながら症状について相談できる環境で働けるのは、理想的ですよね。

ただ、症状が深刻な場合、環境が変わったとしても、ネガティブな考え方は変わらないこともあります。この場合は、一度病院にいって診察を受けましょう。

どの方法を実践するにしろ、うつ病は簡単に治る病気ではありません。うつ病の兆候があったら、予防として以上の対策方法を実践しましょう。病状が深刻だと思ったら、すぐに直そうと焦らず、ゆっくり時間をかけて治療をしていきましょう。

まとめ:医師がうつ病になる原因、仕事を続けるには?

うつ病の原因と改善方法は…
  1. うつ病の原因は労働時間の長さ、全職業の中で最も長い
  2. 人間関係もうつ病の原因に、実際7割の医師が上司への不満を訴えている
  3. うつ病のまま仕事を続けても治らない、まずは一定期間休みましょう

医師は、全職業の中で、最も労働時間が長いです。そして、極度の疲労状態に陥った結果、私たち医師は自殺を考えたり、気分が落ち込んだ状態になってしまいます。

さらに、人間関係もうつ病の原因になります。実際、医師の約7割が上司に不満を訴えています。無理やり仕事を押し付けられたり、理不尽な叱責を受けることで、いっそう精神的負担がかかります。

うつ病に悩み、死ぬほどつらい状態でいるなら、今すぐ仕事を休みましょう。そして、症状を改善するために、一度まとまった休日をもらいましょう。

心のケアの方法としては、まずカウンセラーが挙げられます。ただ、お金や時間がかかり、医師が通院するのは抵抗がありますよね。

そんな方には、自分で心のセルフケアをする方法があります。認知行動療法というケアが成功すれば、うつ病を根本的に直すことができます。

また、うつ病の症状は、労働環境や人間関係といった周りの環境が原因となっている場合があります。この場合、転職して環境を変えてしまえば、うつ病の症状が改善される可能性が高いです。

いずれの方法にしろ、うつ病はすぐ完治する病気ではありません。焦らずゆっくりと治療していきましょう。症状が和らげば、また医師の仕事に戻ることができますよ。

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